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君の社長が飲んだくれてるから迎えにきてくれる?
そんな電話があったのは、午後八時過ぎのこと。
お昼からいないと思ったら、ずっとマスターのところにいたらしい。
役に立たない男だな。
憤慨しつつ、私は仕方なく事務所を出る。
「こんばんはー……」
久々にバーのドアを開く。
いらっしゃい、とカウンターからマスターが微笑む。
接客中の二人の従業員もこちらを見る。
例の同僚ともばっちり目が合って、私は気まずい思いをしながら中に入った。
「何してるんですか、社長」
「あんたこそなんでいるの」
「迎えに来たんですよ。人に仕事押しつけて何時間飲んでるんですか。帰りますよ」
私はグラスを取り上げてマスターに渡す。
酔っぱらいの扱いには慣れている。
立つように促して腕を引くと、社長がだらりと私に凭れかかってきた。
「うっとうしいんですけど、社長」
「随分懐いてるなぁ、マキ。リョウちゃんウーロン茶でいい?」
「あ、どうも……」
ぐだぐだしているうちに、マスターがウーロン茶を出してくれる。
早く帰りたかったのに。
社長をカウンターに投げ出して、私は仕方なく席に着く。
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