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祖父母の家で一泊して事務所に帰ると、いつも日々が戻ってきた。
夏休みだから普段より楽だろうと思っていたが、社長が家に帰らないゆえそうでもない。
仕事をしたり彼の世話をしたり株の勉強をしたり、なかなか忙しい。
「なんで毎日麺類なんだよ」
「夜はごはん食べてるでしょ」
「それでも飽きるんだよ」
「内容は変えてるじゃないですか。嫌なら食べないでください」
私と社長は睨み合う。
ラーメン、そーめん、そば、うどん、パスタ。ちゃんと内容は変えている。
「あ、社長、今日マスターのとこ行ってきてくれません?」
「なんで俺が」
「まだお土産持って行ってないでしょう。前から頼んであるのに」
「おまえが持って行けよ。なんで俺が」
社長は嫌そうに顔を顰める。
私も嫌だと顔を顰める。
マスターもあの店も好きだけど、生憎辞めるきっかけとなった同僚はまだあの店で働いているはず。
私は同年代と相性が悪い。
そう言うと、社長は珍しく共感してくれたらしく、だったら行くと言ってくれた。
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