「あらー、いいわねぇ沖縄なんて」

「でしょ、楽しかった」

私が持ってきたお土産を見て、おばあちゃんは心底うらやましそうな顔をする。
おじいちゃんは新聞を見ているのかテレビを見ているのか知らないが、いつものごとく仏頂面をしている。

「おまえも行ったじゃないか、敬老会の温泉ツアー」

「えっそうなの?おじいちゃんも行ったの?」

「ああ。二泊三日でな」

おじいちゃんはこちらを見ずに答える。

なんだ、ちょっと申し訳ない気がしていたのに、二人も旅行に行ってたのか。
よかった。

「でもよかったわねー、社長さんが良い人で。住み込みなんていうから心配してたけど」

よく見たら、食べていたおまんじゅうが温泉土産だった。
私は包装紙を眺めながら頷く。

「高校卒業したら、そのままそこで働く。居ていいって言ってくれたから」

「なんだ、もう決めたのか」

「うん。だから、言っておこうと思って」

おじいちゃんが新聞から目を外してこちらを見る。

「……大学に行ってもいいんだぞ」

おばあちゃんも、困ったように微笑んで頷く。
私は食べるのをやめて小さく息を吐いた。

「いいの。私は勉強するよりも働きたい。わかるでしょ?」

私は笑う。
おじいちゃんが険しい顔をして、おばあちゃんが悲しそうに目を伏せた。

二人は私に罪悪感を持っている。
自分の息子が、私を捨てたから。
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