父親はギャンブルに狂っていた。
母親は買い物に溺れていた。

彼らが作った借金は面白いほどに膨らみ、夜逃げに夜逃げを重ねて、ついに二人は借金ごと失踪した。

そして、中学生だった私は祖父母のもとへ引き取られた。
が、年金暮らしの彼らに甘えているわけにはいかない。

あの両親を反面教師として育った私は、自分で言うのもなんだが年齢のわりにしっかりしていた。
なので、すぐに自立しようと思い至った。
そして、私のバイト生活は年齢詐称から始まったのである。

稼げそうなものはとりあえず手を出した。
水商売だけは、「おまえみたいなブスには無理だ」と心配しているのかなんなのか、大真面目な顔で祖父が言うので諦めておいた。

高校は無理にも出ておきたかったので受験をした。
中卒じゃ稼げない。
あの親から生まれた私に商才があるわけもないし、音楽やスポーツ、その他諸々の才能も然り。
宝くじを当てるほどの運も無い。

それでも私はあの借金地獄を体験してきた人間。
高校三年間の学費くらいどうにかなる。
単位さえ取れればいいので、出席ギリギリでバイトメインにやってきた。

そして見事に高校も三年目。

相変わらず貧乏な私に、ほんの少し、運が傾いてきたようである。
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