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「金星に住みたい」
「なぜ?」
「カネの星ゆえ」
「そこまで行く金もないくせに」
私は社長を睨み付ける。
彼は視線を向けることすらせず、パソコンのキーを叩き続ける。
「……さっさと働け。働いたらあんたの大好きな金を支払ってやる」
それでも私が睨んでいると、社長はめんどくさそうに口を開いた。
その言葉を聞いて、私は仕事を再開する。
すべては金の為。
金の為ならこんな男のもとでだって働いてやる。
まとめた書類を鞄に入れて、事務所を飛び出す。
世の中は不平等だ。
神様はなぜ、金持ちと貧乏人を作ったのだろう。
クーラーの下でデスクに向かう社長のため、私は炎天下の街へ足を踏み出した。
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