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「そんな心配いりません。私がそんなヘマをするわけがありません」

「可愛くねぇ」

「あなたに言われたくないです」

自分だってレポートだの試験だのを控えていて、何もしてないくせに。
私はくすりと笑う。
それに気づき、社長が不満げに私を見る。

「なんだよ」

「いや、あなたにも他人の心配なんてできるんですね」

「俺じゃない。英二だって言ってるだろ」

社長は言って、つんとそっぽを向く。
その様子がおかしくて、私はくすくすと笑う。

大人ぶっているけど、本当は子供っぽい人だ。
偉そうで、人使いが荒くて、自分の興味のあることしかしない身勝手な男だけど、実は寂しがり屋だったりする。
だから一緒に食事をする。
家があるくせに帰らない。
なんだかんだ文句を言いながら、私の面倒を見てくれる。

三ヶ月も一緒に過ごしていると、だんだんお互いの性格もわかってくる。
そして、相手と折り合う術を見つけ、この時間が過ごしやすくなってくるのだ。

「あ、これで金入ったら授業料払えよ。時給千円でカウントしてるから」

前言撤回。
この金のことしか考えていない男と折り合う術など、あるわけがなかった。
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