17
コーヒーを運びながら、私はパソコンに向かう社長をじっと見つめる。
画面上には、私の理解できないグラフのようなもの。
頬杖をついてそれを眺めていた社長は、私の視線に気づいていたらしく小さく溜息をついた。
「持ってきたならさっさと置けば」
「それ、儲かるんですか」
答えになっていない私の返事に、社長は振り向いて首を傾げる。
そして私の視線の向いているほうに気づき、ああ、とつまらなさそうに言う。
「儲からなければやってないだろ」
確かに。
私はデスクにカップを置いた。
「私も株、やりたいです」
「やれば」
「教えてください」
私の言葉に、社長はさも迷惑そうに眉を寄せた。
「なんで俺が」
「じゃあ他に誰が」
「俺が知るか」
「ケチ」
社長が私を睨む。
それからくるりと椅子ごとこちらを向き、腕を組んで私を見上げた。
「時給いくら払う?」
挑戦的に言われて、私はがくりと肩を落とす。
この金の亡者が。
一歩先をいかれた気がして、私はもういいと手を振った。
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