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安心したよとマスターはもう一度言った。
「この子、難しい子だから。リョウちゃん手を焼いてるかな、って思ってた」
「なんでそんな人に紹介するんですか」
「いや、君、世渡り上手そうだから」
さらりと言われて、私は憮然と口を噤む。
えぇえぇ上手いですとも。
一体どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたと思ってるんですか。
「マキ、リョウちゃんに迷惑かけたりしてないだろうな?」
「迷惑かけられてるのはこっちだよ。なんでこの女ここに住んでんの?」
「え、リョウちゃんここに住んでんの?」
「もう二ヶ月以上前から」
私が答えると、マスターは爆笑し始めた。
別に笑うところじゃない。
意見が一致した社長と目が合った。
マスターの煙草が手から落ちそうになる。
私はすかさず灰皿を差し出し、社長は彼の手から短くなったそれを取り上げた。
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