卒業式は、よく晴れた気持ちの良い日だった。
同級生の泣いてはしゃぐ声も今日は煩わしくない。
人とすれ違うたびに花束からふわりと甘い香りが漂って、無意識に口元に笑みが浮かんだ。

単位ぎりぎりだが無事に高卒という学歴を獲得できた。
これで今後、このような無駄な時間を使わなくて済む。
吉田及び歴代の教師たちの願う学生生活が送れず、手を煩わせてしまったことだけ、ちょっと申し訳なく思う。
でも、結局私が大切なものを見つけたのは学校の外だ。
もう、ここに用はない。

あちこちで瞬くカメラのフラッシュを避けながら、私は地面を埋める紙ふぶきを踏んで正門へ向かった。

「オメデトウゴザイマス」

さっさと帰ろうと脇目も振らずに学校を出ようとしたところで、横からばさりと鮮やかなピンクが差し出された。
驚いて顔を上げる。
営業用の小奇麗なスーツ姿で、抱えるほどの大きな花束を持った社長が澄ました顔で眉を上げた。

「……似合わないですよ、こんなの」

「それでも来てやったんだろうが、感謝しろ」

「ありがとうございます」

私は吹き出して、花束を受け取った。
制服も見納めですよとからかうように言うと、さっさと捨てろと辛辣な言葉が返ってきた。
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