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「もうバイトでも友達でも恋人でもなんでもいいから、戻ってこい。あんたの家はここだろ」

社長が偉そうに勝手なことを言う。
意思に反して胸が締めつけられ、私はぬいぐるみを抱きしめる腕の力を強める。

「仕事、決まったんですよ」

「辞めろ。阿呆か」

「もう遅いんですよ」

「……じゃ、俺があんたを買う」

思いがけない言葉に、私は顔を上げる。

「俺が買うよ。だから帰ってこい」

目が合うと、社長はいつものように視線を逸らしたりせず、まっすぐに私を見てもう一度繰り返した。

そっちこそ阿呆か、と思う。
思わず表情が歪み、私は俯いて泣きそうになる顔を隠す。

「私は億単位ですよ」

「いいよ、いくらでも。一生かけて払うから」

「一生ですか」

「ああ、だから一生俺といろ」

……卑怯だ。
私はお金に弱いのだ。
そんなことを言われたら、帰ってくるしかないじゃないか。
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