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気がついたら、悔しくなってしまった。
あのペンギンは私のものだ。
私が買ってもらったものだ。

放課後、私は社長のマンションに向かっていた。
問題は鍵だが、社長が取っていなければ、ここを出るときに突っ込んできた合鍵がまだ郵便受けに入っているはず。
あの人のことだから放置してるだろうなと思っていたら案の定、郵便受けの中には手紙やちらしに混ざって鍵がそのままになっていた。

私は鍵を手に、オートロックの玄関を抜けて社長の部屋へ向かう。
今日は恐らくゼミのある日。
大学へ行ってそのまま事務所に向かうはずで、社長は留守のはずだ。

とりあえずインターホンを押してみる。
応答なし。
基本あの人は居留守を使うから、そもそもこんなものあてにならない。
少し躊躇って、鍵を差し込む。
回すとがちゃりと手ごたえがある。

泥棒の気分でドアを開け、様子を窺いつつこっそりと中に入った。
人の気配はない。
一応お邪魔しますと声を掛け、部屋に上がる。

当然だが、出て行ったときと何も変わっていない。
にもかかわらず状況が一変したおかげで、二、三日来なかっただけなのに妙に懐かしくなってしまう。
今まで社長と過ごしてきた記憶がよみがえってくる。

じりっと胸が痛んで、私は思考を振り払った。
何を思っても、すべて終わったことだ。
努めて何も考えないようにして、私はそろそろとリビングへ向かった。
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