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ペンギンを忘れた。
昼休み、手のひらでころころと星砂の小瓶を転がしていたとき、再び思い出した。
水族館で買ってもらったペンギンのぬいぐるみ。
まだ社長の家にいるだろうか。

「お、星砂だ。沖縄から買ってきたの?」

ふと視界が翳って、私ははっとして顔を上げる。
にこにこ笑っている童顔メガネ。
吉田は私の前の席に腰かけ、にこにこと机に頬杖をついた。

「最近ちゃんと学校来てくれるから、先生うれしいよ。もうすぐ卒業だしね。さみしいね」

「うれしいです」

「ひどい。小谷は俺と離れても平気なの」

「おつかれさまでした」

ぺこりと頭を下げてみせると、まだ終わってないよ!と吉田は芸人ばりのつっこみを見せる。

「小谷は今のバイト先にそのまま就職なんだよね?」

「……はい」

「よかったなぁ、安心だよ先生も。小谷、バイト先では楽しそうだし」

今更だめになりましたなんて言えず、私は曖昧に頷く。

「今度は卒業旅行に、北海道にでも連れて行ってもらうといいよ」

「……そうですね」

「うん。だから、それまで学校でも楽しく過ごそうね」

吉田がにっこりと笑う。
私もいつものように苦い笑みを浮かべる。

そういえば、いつだったか朝日を見に行きたいとも話したのに。
叶わないまま終わるのだなと、胸にちりりと痛みが走った。
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