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「両親に会いました」

私が告げると、マスターは目を見張った。

「一緒に暮らそうと言われました。祖父母の財産目当てで。なので、断りました」

「……そう」

淡々と事実だけ報告すると、マスターは睫毛を伏せて静かに頷く。

「マスターの言ったとおり、会ってよかったと思います。残念な結果になったけど、すっきりしたので。だから、最後にお礼を言いたくて」

ちょっと間を置いて、ありがとうございましたと頭を下げる。
マスターは眉を下げ、渋面をつくって首を振った。

「最後なんて言わないで。俺のせいなんだよ。俺がマキに、リョウちゃんのご両親の話をしたから」

突然そんな話が出てきて、私は顔を顰めて首を傾げる。

「マキがリョウちゃんをクビにしたのは、ご両親と暮らしたほうがいいと思ったからだと思う。たぶん、自分が邪魔になると思ったんだ。リョウちゃんを突き放したかったわけじゃない。だから……」

「マスター」

彼が言わんとしていることを悟って、私はマスターの言葉を遮る。

「そのことは予想してました。たぶん聞いたんだろうなって。社長の様子、おかしかったから」

私は出ていく日のことを思い出して苦笑する。
マスターにとってはその言葉が予想外だったように、目を瞬かせる。

「今の話聞いたら、そういうことだったのかなとも思います。ていうか、そうだったらいいな。社長が私のことを考えてくれててもそうでなくても、私は彼に感謝してますけど」

一度言葉を切り、ふっと笑みを浮かべた。
社長の考えがどうであっても、私にしてくれたことは変わらない。
彼に支えられていたことは変わらない。
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