11


とりあえず家を借りるべきだと、学校帰りに不動産に寄った。
壁に貼られた物件を眺め、家賃の高さに辟易する。
制服ゆえ店内に入るのは不利なので、パンフレットだけもらって帰ることにする。
未成年って不便だ。

公園に行って、ベンチに座ってパンフレットを見ながら家探しと職探しをする。
寒い。おなかすいた。
冬は日が落ちるのが早くて、私は身を震わせてパンフレットを鞄にしまう。
何か食べ物はなかったかと鞄の中をあさってみるが、めぼしいものは入っていない。

しつこくポケットをがさごそしていると、何か冷たいものが手に当たった。
なんだこれ。
取り出して、手のひらに転がしてみる。
見覚えのある小さな瓶の中で、さらさらと星が零れた。

「まだ持ってたのか……」

どこにいったのかと思っていたら。
今では懐かしくさえ感じる沖縄土産。
そういえば社長にも同じものを押し付けたなと思い出して、くすりと笑う。
あの人はまだ持っているだろうか。
持っているわけないか。
私も忘れていたんだから。

白い息を吐いて、空を見上げる。
街の明かりが夜に侵入して、星の光は届かない。
瓶の中の白い星を傾けて、ぬいぐるみを忘れてきてしまったな、と思った。
社長に買ってもらったペンギンのぬいぐるみ。
せっかくだから、持ってきたらよかった。

一度目を閉じて、思考を断ち切る。
とりあえず、ごはんを食べよう。
鞄を肩に掛けて立ち上がり、コートのポケットに星砂を突っ込んで、私は公園を後にした。
|

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -