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「だって、働かないと学校来れません」
少し俯いて、私は声のトーンを落とす。
「私、勉強したいんです。少しでもいいから。だけど、お金なきゃ生活できない。学校も、ほんとに来れなくなっちゃう」
涙を浮かべてぱっと顔を上げると、吉田はあからさまにうろたえる。
「小谷、俺は……」
「先生、私、今のままでもいいから、学校来たいんです。でも、そのためには働かなきゃいけないんです」
「そ、それはよくわかってるよ。ただな、俺はおまえを心配して……」
「私は大丈夫です。ありがとうございます、先生。私のこと気にかけてくれるの、先生だけです」
「小谷……」
先生が、泣きそうな顔をして声を詰まらせる。
ちょろい。
私を泣き落とし歴何年だと思ってるんだ。
そうして、私は今日の説教を乗り切った。
不幸は時として武器になる。
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