「随分大人になったなぁリョウ。それが親に対する口の聞き方か」

ふっと昔の記憶が呼び起こされる。
この人はよくこういうことを言っていた。

「もう親だとは思ってません。出て行ってください」

「そんな……。私たちはリョウに会えてすごくうれしいのに、リョウはそう思ってくれないの」

「思いません、私の名前を呼ばないで。出て行って」

「おまえなぁ!」

テーブルを叩いて、父が立ち上がろうとする。
対借金取りの経験から得た根性で、私は怯まずに彼を睨みつけた。

「ここで騒いだら警察呼びますよ」

父母の態度が揺れる。
私はあくまでも毅然とした態度を貫く。

「出て行ってください。もう二度と来ないで」

ぎり、と父が歯ぎしりをする。
お互い強く睨み合って、均衡状態が続く。

「……出て行きなさい」

場を収めたのは祖父だった。
父が立ち上がり、悪態をついて玄関へ向かう。
母が慌てて追いかけていく。

祖父が大きく溜息をついた。
残った香水の香りが懐かしく鼻をついて、馬鹿みたいに少しだけ泣きそうになった。
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