END


「俺が吸血鬼だったら、迷わずおまえの血を吸うな」

旭が私の首に手を添え、静脈を探るように親指で肌を撫でる。

「絶対におまえの血は美味いよ」

「えぇえ、私って美味しそうに見えるんですか?」

「おばさんが言ってただろ、血を吸う相手は外見がいいほうがいいって。そんで、それよりも好きな人のほうが美味いって」

私が不満げに顔を顰めると、旭はにやりと口角を上げる。
気を遣われているんだろうか。
情けなくなって溜息をつき、私はもう一度旭の首に腕を絡めた。

「反省終わり?」

契約のようになっているお礼のキスをひとつ。
旭が可笑しそうに笑ったので、私は照れ隠しで事務的に告げる。

「来月もよろしくお願いします」

「ハイハイ、一生面倒みてやりますよ」

「年取ったら若い男に乗り換えるかも」

「ふざけんなてめぇ」

そう言いながらも旭の顔が幸せそうだったので、私は安心して口元を緩めた。

旭は私の最上で、彼の血を吸う瞬間は夢に堕ちたように幸せだ。
だけど、それよりもこうして将来を確かめる時間のほうが幸福なのだとは、悔しいから永遠に内緒にしておくことにする。

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