ほう、ほう、とどこかで梟が鳴いている。
頭上で葉の擦れる音がして、蝙蝠が闇をを横切っていく。
あのさ、と旭が口を開いた。
私は、どこか神妙な様子の彼の顔を見上げる。

「おまえのばあちゃんは純粋な吸血鬼って言っただろ。墓参りに行くっていうのはどういうことなの」

最もな疑問だ。
少し躊躇ったが、今更隠す必要もないかと話をしておくことにする。

「おじいちゃんが亡くなったときに、おばあちゃんも後を追ったんですよ。平たく言うと自殺したってことなんだけど」

「自殺、は可能なのか」

「不死ってわけじゃないの。さっきも言ったとおり、日光とか十字架とかだめだからね」

「死ぬくらい?」

「少なくとも、おばあちゃんは十字架で亡くなったけど。キリスト教圏で育った人だったからかもね。私とママはわりと平気」

軽い口調で言って、私はぷらぷらと繋いだ手を揺らす。
それでも旭は複雑そうな表情をしていて、私は苦笑してさらに続けた。

「吸血鬼としては、とても幸せな生き方だったと思いますよ」

「……幸せ?」

「受け入れてくれる人間を探して、一緒に生きて、一緒に死ねるってことは」

私は繋いだ手に力を込め、旭を見上げる。

「だから何も心配しなくていいんですよ。私はあなたを見つけたことですし」

私にここまで言わせるとは、本当に面倒な奴だ。
その言葉を聞いた旭は、私の澄ました顔を見て、ようやくいつものように無邪気な笑みを浮かべた。

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