ゆっくりと森の中を歩く、午前零時。
後ろからついてくる旭は完全に肝試し気分で気味悪がっており、夜目のきく私はその手を引いてさくさくと進む。

「何でこんなとこに墓なんか作るんだよ」

「こんなとこだからですよ。おばあちゃんは純粋な吸血鬼だから、太陽がだめなんです」

「純粋な……」

母から聞いているだろうと思ったら、知らなかったらしい。
旭が呟いたのを聞いて、私は歩調を緩めて彼の隣に並んだ。

「おばあちゃんはもともと外国に住んでいて、そこでおじいちゃんに出会って日本に来たの。おじいちゃんは人間ですよ。だから、ママは吸血鬼の血は半分。私は四分の一」

「人間に近いんだな」

「そう。でも人より日光はだめだし、十字架も苦手。あと、たぶん人より寿命が長いと思う」

「え?」

「吸血鬼は永遠の命を持ってるんですよ」

私の言葉に、旭はぱちりと目を瞬かせた。

「おまえ、死なないの?」

「死にますよ。ただ、年を取るのが遅いかもしれない」

「ああ、おまえの母さんも全然年取らないもんな」

「だから、外に出ないかこっちに引っ越すか、どっちかになると思う」

旭の反応を気にしつつそう言うと、彼は黙って繋いだ手に力を込めた。

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