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そういえば、と旭が思い出したように口を開く。
「今度うちに来いって」
「え?」
「親に話してきた。付き合うって」
はっ?と私は顔を上げた。
「もう言ったの?早すぎるでしょ、ちょっと」
「また逃げられると困るし」
「に、逃げませんよ」
「周りから固めるのが大事だろ。俺はもう手段は選ばないことに決めた」
開き直ったように宣言されて、自業自得な私は何も言い返せずに口を閉ざず。
やっぱり行動力のあるほうの勝ちか。
完全に主導権を握られてしまっている。
「……吸血鬼だってことは」
「言うわけねぇだろ」
「そうじゃなくても、私、ニートだしひきこもりだし」
「喜んでたよ。お祝いしようって」
観念しろと頭に手を置かれ、私はまたしても項垂れる。
森川家のみなさんごめんなさい。
まさか息子が吸血されているなんて思わないだろう近所の親切なご一家に、私は心の中で深く謝罪した。
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