「ちゃんと言えよ、血が欲しいときは」

私を腕の中に閉じ込めてベッドの上に座り、旭が私の顔を覗き込む。
釘を差すように言われて、私は苦笑いを浮かべた。

「月に一回くらいでいいんですよ。ストックもあるし」

「そっか。でも、好きなときに言え。別に痛くなかったし」

「ほんとに痛くないの?」

「痛くねぇよ。衝撃のほうが大きくて、すぐブラックアウトした」

「気持ち悪いとか、苦しいとかは?」

「ないな。貧血みたいになったりはするけど、寝たら治っただろ」

旭の手が心配するなというように髪を撫でる。
私が血を吸った後、旭は倒れて一時間ほど眠っていた。
確かに貧血のような感じで、起きた直後はふらふらしていたがすぐ元気になった。
痛みがなくても、負担をかけるのは心苦しい。

「俺としては、遠慮されるほうが嫌なんだけど」

眉を下げると、見透かしたように旭が口を尖らせる。

「おまえがぶっ倒れるのも、他の奴の血を吸うのも嫌だし」

「それはもうしませんよ。でも、頻繁に吸ってたらそっちのほうが体調崩しちゃうし、傷だってつけちゃうし」

「別にいいよ、おまえが残す痕なら」

さらりと言われて、私は口を噤んで視線を逸らす。
もともと直球な物言いをする奴だが、恋人となったこれからはこんな歯の浮くような台詞を聞かされることになるのだろうか。

約束しろと小指を差し出されて、私はしぶしぶ自分の小指を絡めた。

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