伸びてきた手が、そっと私の肩に触れる。
私はその手を強く振り払った。
だめだ、今触れたら私は。

「……来ないで」

うずくまって、喉を掻く。

「近寄らないで」

絶対に血を吸わないと決めた。
旭の将来を壊さないと決めた。

見せたくない、こんな姿。
顔を隠すように髪をつかんで、欲求に堪える。

「美夜」

「いや、お願い、触らないで」

声に涙が混じる。
旭が私の前に膝をつく。

なんでだろう。
こんなに好きだと、大事だと思うのに、血が吸いたいと喉が鳴る。
傷つけたくない。
痛い思いなどさせたくない。
だから傍にいられないのだ。なのに。

「俺の血、吸え」

旭が私の手首を掴み、体を引き寄せる。

「おまえ、ずっと吸ってないだろ。意地張ってないでさっさと吸えよ」

相変わらず呆気なく当然のように言われて、私は旭を睨む。
ようやく目を合わせて、初めて旭が苦しそうな顔をしているのに気がついた。

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