とはいえこのままじゃどうにもならない。
私はようやく思い切りをつけて、地下室から出ることにした。

喉が渇く。
血が欲しい。

こんなときでさえ迫ってくる欲求に、もはや諦めを感じてしまう。
これをごまかすにはきちんと起きて、食事をして、運動して寝るしかない。

まず森へ出て、墓参りがてら散歩をした。
インスタントやレトルト食品を消費するのをやめて、庭から野菜を摘んできて、土鍋で雑炊を作った。
ゆっくりお風呂に使って、祖父の書斎から本を拝借して読書を始めた。

それでも浅ましい身体は血を求め、日に日に渇いて乾涸びていく。
ここに来てもうすぐひと月。
生血を吸っていないのはそれ以上。

限界だ、と思う。
それでも誰かの血を吸う気にはなれない。
他の男と会うな。
繰り返されたその言葉が呪いのように、私を抱いたあの腕のように、私を戒めて離さない。

旭は何をしているだろう。
いつもどおり大学に通って、バイトに行って、友達と遊んだりしているはずだ。
少しは罪悪感でも感じてくれているだろうか。私を探してくれているだろうか。
それとももう、愛想をつかしてしまっただろうか。

もう帰りたくない、と強く思う。
現実逃避だとわかっていても、このままひとりで隠れていたい。

だけど、そんなの無理だ。
ここに来てもうすぐ一ヶ月。
母は理解してくれているだろうが、あの過保護な父が許してくれるはずがない。
そろそろ連れ戻しに来てもおかしくない。

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