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闇が怖いと感じ始めたのは、いつからだっただろう。
光の射さない地下室。
祖母の為に作られた部屋。
私はベッドの中で体を丸めて、ぎゅっと目を閉じている。
目を開けていても開けていなくても変わらない。
だったら目を閉じているほうがいい。
それでも目蓋によみがえってくる光景にはっとして、悲鳴をあげて起き上がる。
もう二週間ほど、そうして過ごしていた。
身動きが取れない。
今までこの退屈な時間をどんなふうに過ごしてきたか思い出せない。
思い出そうとすると、必ず浮かんでくるのは。
旭。
唇がその名の形を紡いでも、声になって出てこない。
あのときの熱が、優しさが、痛みとなってせりあがってくる。
もう思い出したくもない。
どうにかして忘れてしまいたい。
その一心で逃げてきた。
今度こそ、何もなかったことになんてできない。
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