10


熱い。
痛い。
苦しい。
旭の手が、唇が、熱をともして体を這う。

「いや……」

声も顔も涙でぐちゃぐちゃで、思考もこんがらがって訳の分からないことになっている。
私が嫌がることなんて絶対しないのに。
ましてや泣かせてまでなんて。

「美夜」

それでも旭まで泣きそうな、苦しそうな顔をしているせいで、強く責めることができない。
無理やりこんなことをしているくせに、触れる手や私を呼ぶ声はどこまでも優しい。

「美夜……っ」

旭の顔が肩に埋められて、切羽詰まった声が耳に響く。

旭の血は絶対吸わないと思っていた。
彼の人生を狂わすまいと。
一緒になんかいられるわけがない。
好きな人を見つけて、結婚して、子供が産まれて、そんなふつうの生活をしてほしいと思っていた。

だからこんな方法で、こんな人間的な手段で組み敷かれるなんて考えもしなかった。

唇が触れて、深く重ねられる。
抗う気力もなく、私はぎゅっと目を瞑る。

望まない未来ばかりに襲われて、いい加減疲れ切って私は旭の腕に身を沈めた。

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