旭が家に帰ってから、すぐに携帯を取り出した。
誰とも連絡を取らなくなって、ひと月。
いまだに連絡を寄越してくるのは厄介な例の男だけ。
血を吸われたことは、酔って寝てしまったという解釈で忘れているようだ。

リスクはあるが、この男がちょうどいい。
私は返信メールを作成し、ちょっとためらって、送信した。

土曜の夜に会えませんか。

五分後、帰ってきた返事は了承の意。
罪悪感を抱えたまま、私は待ち合わせ場所に立っている見覚えのある男に笑顔で手を振った。

いつものように食事をして、酒を飲んで、彼をホテルに誘った。
案の定断られたけど、それも想定内。
送っていくよと告げられて、私は素直にお願いする。

真面目に付き合いたいというわりに女慣れしているこの男にとって、これが遊びなのはわかっている。
そのほうが都合がいい。
血を吸うのに躊躇わずに済む。
前回と同じく家まで連れて行かずに、近くの公園に引っ張り込んだ。

もうすぐ旭がここを通る。
まだ十一時。
抜き打ちのように、今帰るとメールがあった。

私がごまかすから、旭が縛りつけられるのだ。猶予を与えるから、期待させてしまうのだ。
打ちのめしてしまえばいい。
現実を見せて、諦めさせるのが一番いい。
私が旭と女の子がいるのを見てそうしたように、もう二度と、近づけないと絶望させてしまうほうが。

人気のない夜道、静寂の中を足音が近づいてくる。
私は隣に座る男を見つめ、そっと彼の首へ腕を絡める。
ベンチがぎしりと軋み、近づいてきた足音が止まった。
響いた音に通りから向けられたのは、よく見知った彼の顔。
私は目を閉じて、男の唇を自分のそれで塞いだ。

|
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -