7
土曜日に飲みに行く、と旭は言った。
決意から一週間、やっとチャンスがきた。
「学科のコンパだよ。めんどくせぇな」
「何言ってんですか。そういうの好きなくせに」
「まぁ嫌いじゃないけど」
不満そうにつぶやいて、旭はちらりと私を見る。
「誰かさんが心配なんだよ俺は。おまえ、ずっと出かけてないだろ」
「いつものことじゃないですか」
「血を吸ってないだろ」
言って、私の腕を引き寄せる。
コントローラーが手から滑り落ち、旭の胸に倒れ込んだ。
「吸え」
「いつまでそんなこと言ってんですか」
「いつまでしらばっくれるつもりだよ」
「しらばっくれるも何も、そんな冗談に付き合ってられませんから」
私は旭の体を押しのけて、ゲームの画面に戻る。
後ろから腕が伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられる。
首筋に顔をうずめて、旭がぼそりとつぶやいた。
「行くなよ」
コントローラーを動かす手が止まる。
「……好きだ」
それでも、私は裏切らずにはいられないのだ。
唇を噛んで、心の中でごめんと謝る。
私が答えないのを知っている旭はそれ以上何も言わず、私を縛るように抱きしめる腕の力を強くした。
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