土曜日に飲みに行く、と旭は言った。
決意から一週間、やっとチャンスがきた。

「学科のコンパだよ。めんどくせぇな」

「何言ってんですか。そういうの好きなくせに」

「まぁ嫌いじゃないけど」

不満そうにつぶやいて、旭はちらりと私を見る。

「誰かさんが心配なんだよ俺は。おまえ、ずっと出かけてないだろ」

「いつものことじゃないですか」

「血を吸ってないだろ」

言って、私の腕を引き寄せる。
コントローラーが手から滑り落ち、旭の胸に倒れ込んだ。

「吸え」

「いつまでそんなこと言ってんですか」

「いつまでしらばっくれるつもりだよ」

「しらばっくれるも何も、そんな冗談に付き合ってられませんから」

私は旭の体を押しのけて、ゲームの画面に戻る。
後ろから腕が伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられる。
首筋に顔をうずめて、旭がぼそりとつぶやいた。

「行くなよ」

コントローラーを動かす手が止まる。

「……好きだ」

それでも、私は裏切らずにはいられないのだ。
唇を噛んで、心の中でごめんと謝る。
私が答えないのを知っている旭はそれ以上何も言わず、私を縛るように抱きしめる腕の力を強くした。

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