6
厚いカーテンの向こうで空が白み始めた頃、パソコンの電源を落として、ベッドに近づいて旭の顔を覗き込んだ。
気持ちよさそうにすやすやと眠る彼の頭に手を伸ばす。
起こすのがしのびなくて、そっとふわふわとした茶色の髪に触れると、旭はゆっくりと目を開いた。
「……朝?」
「うん、起きる?」
「もうちょっと寝る……」
旭に手首を取られ、引っ張られて、彼の隣に倒れ込む。
体に旭の腕が回って抱き締められ、そのまま動けなくなってしまう。
本当に、危機感が足りない。
私にここで噛みつかれるとは思わないのだろうか。
それとも、これは罠なのだろうか。
血を摂取してきたのは正解だったな。
私は大人しく布団を引き寄せ、目の前の誘惑を断ち切ろうと目を閉じる。
「みや」
寝ぼけたような掠れた声。
彼の唇が額に当たり、長い指が髪を梳く。
わけもなく胸がつまって、息ができなくなった。
私が旭を受け入れれば、この手は私のものになるのだろう。
こうして名前を呼ぶ声も、温かさも、優しさも、全部私だけにくれるのだろう。
だけど、私はそれを捨てる。今度こそ。全部捨てる。
ぎゅっと目を閉じ、旭の胸に顔を埋める。
応えるように強くなった腕の力を、忘れたくない、とただ願った。
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