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「あんたも潔く覚悟決めたらいいのに」
グラスをくるくる回しながら母が言う。
「覚悟はとっくに決めました。旭がそれを邪魔するんです」
私は顔を顰めて言い返す。
母は頬杖をついて、完全に面白がっている顔をする。
「告白されたんでしょう」
「……だったらなに」
「なんで付き合わないの。好きなくせに」
しらばっくれても無駄だろうと認めると、母はにやにやと笑ってつっこんでくる。
女子高生か。
私は鼻で笑ってみせる。
「他の男と会うなって言うんだもん」
「会わなければいいじゃない」
「もう血を吸わずには生きてけない」
「旭の血を吸ったら?」
「吸わない」
「じゃあなんでそんなもの飲んでるの」
母が私の手の中のパックを示す。
私は渋い顔をする。
思わず手に力がこもる。
「もう他の人間の血を吸う気、ないんじゃないの」
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