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キッチンに行くと、ワインを飲んでいた母が私を見てにやりと笑った。
「結局ヨリ戻したの」
私は母を睨んで戸棚を開ける。
「ヨリも何も、付き合ってませんから」
ストックの血液パックを取り出して、母の斜め向かいの席につく。
「旭は?」
「寝てる」
「それを飲むってことは、まだ手は出してないのね」
「出さないってば」
頬杖をついて面白そうに身を乗り出してくる母を無視して、私はパックから血を流しこむ。
おいしくない。
とは言っても、出かけられないのだから仕方がない。
旭に正体がバレたことは、すぐに母に打ち明けた。
怒られるかと思いきや、母は一分激怒しただけで、あっさり許してくれた。
たぶんバレたのが旭だからだ。
母は最初から全部見透かしている。
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