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後ろでごろごろしている男のせいで、ゲームに集中できない。
私は惰性で手を動かしながら、無意識に溜息を漏らした。
「なに溜息ついてんだよ」
「いえ、別に」
「おまえいつまでゲームしてんの。暇なんだけど」
「じゃあ帰ったらいかがですか」
結局事態は元に戻って、旭はうちに入り浸っている。
元に戻ったどころか悪化だ。
まるで私を見張るように、学校とバイトの時間以外うちにいるといってもいい。
おかげさまで十日は血を吸っていない。
「もう寝るわ。おやすみ」
「ちょ、何言ってんですか。自分ちで寝てくださいよ」
「おまえ、どうせ寝るの朝だろ。そんとき起こして」
「いやいや、そういう問題じゃないですから」
ベッドのほうを振り返ると、旭は私を無視してこちらに背を向ける。
このやろう。
無理やり起こして追い出してやろうかと思ったが、そんなことできるわけもなく、私はもう一度溜息をついてゲームに戻った。
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