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は、と私は乾いた笑いを漏らした。
「血とか。何言ってるんですか」
「調べたんだよ。おまえが『彼氏』を放置したまま帰った後、おかしいと思って。何もしてないし貧血かと思ったら、首に歯の跡がついてんじゃねぇか。そういうことだろ」
旭が私を威圧的に見下ろす。
ぐらりと眩暈がする。
母が心配していたことが現実になってしまった。
私は馬鹿だ。
近所の公園のベンチに放置していながら、誰かに見られるなんて思いもしなかった。
ようやく落ち着いてきたと思ったのに。
こんな不注意で。
しかも、よりによって知っている人間に。
「これで全部合致した。おまえが外出したがらないわけも、貧血のわけも。おばさんも、ばあさんも、そうなんだろ。吸血鬼ってやつか。おまえの『彼氏』はエサなんだろ」
私はもう一度引きつった笑いを漏らす。
「吸血鬼?そんなもの本気でいると思ってるんですか」
吸血鬼、だなんて。
他人の口から出ると、馬鹿馬鹿しくさえ思えてしまう。
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