祖母は私にはとても優しかったけれど、母より吸血鬼らしく魅惑的な人だった。
男を手玉に取り、上手に生きてきた冷酷な人。
そのくせ祖父に恋して、命までも捨ててしまった情熱的な人。

彼女なら、今の私を見てどう思うだろうか?
私にしては上出来だ、と褒めてくれるかもしれない。
全部見透かして、馬鹿な子ね、と呆れて笑うかもしれない。

祖母になら打ち明けられただろうか?
我慢できないほど生血を欲しているくせに、本当は自分が穢れていくようで死にたくなること。
旭が離れることを喜んでいながら、どうしようもなく会いたいと願っていること。

会いたい。
会って、いつもみたいに愚痴っぽく叱ってほしい。
私だけを心配して、他の人なんか見ないでほしい。

「ただの人間になりたい……」

祈るように組んだ手に、額をつける。

私より母より、祖母が望んだはずの願い。
今ならわかる。
わかるから、より、吸血鬼に近づいたことを自覚する。

「おじいちゃん」

助けて、と祖母が絞り出しただろう声は、彼に届いていたのだろうか?

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