唯一の仕事、祖母の家の管理。
血を我慢するために、真面目に通うことにした。

窓を開けて換気をする。
一通り家の中の掃除をして、庭仕事をして、墓参りに行く。
漫画もゲームもネットも無い健全な生活。
他人と関わることもなく、太陽を避ける罪悪感もない、穏やかな暮らし。

血がなくても生活できるんじゃないかと思う。
だけど、この渇きを無視することができるはずもなく、家に戻ればまた元の生活だ。

考えてみれば、祖母も母も贅沢な生き方をしていると思う。
血液の提供者が一番近くにいて、それが一番好きな人で。
それが一番の幸せなんじゃないかと、漠然と感じるようになった。
私には、絶対に手に入れることができない幸せ。

「おじいちゃんおばあちゃん、美夜は吸血鬼になりましたよ」

庭のバラを一輪添えて、私はお墓の前で報告する。

「今のところ順調です。生血はとても美味しいです」

順調すぎて母に窘められたのは言わないでおく。

おばあちゃんに会いたい。
聞いてほしいことがたくさんある。

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