旭のことは関係ない。
母の言いつけを守り、外出する日を週に一度にした。

いつも遠出をするのに加え、相手に手間取ってしまったその日、帰ってきたのは朝を迎えた頃。
日が昇る前に、と早めた足を止めたのは、家の付近で人影を見つけたからだ。
旭の家の前。
ひと月以上合わせていなかったその顔は、一緒にいた女の子に向けられていた。

「旭くん?」

どうしようかな、と思ったすえに足を動かす。ここで立ち止まっているわけにもいかない。
近づいてきた私に気づいた彼の顔がこちらに向いて、女の子が不思議そうに彼を呼んだ。

綺麗な人だ。
すらりと背が高くて、旭によく似合う。

私は声を掛けずに通り過ぎた。
旭も何も言わなかった。
ただそれだけ。
私が望んだ、そのとおりになっただけ。

「……行こっか。駅まで送るよ」

「うん、ありがとう」

門を閉める音に紛れて、そんな会話が耳に届いた。
もうその優しさは私に向けられることはないのだと、突き付けられた気がした。

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