恐怖や罪悪感が麻痺するのはあっというまだ。
それよりも、身体が疼いてすぐに血が欲しくなる。
まるで中毒。
肌を突き刺す感覚にも慣れてきたし、人それぞれに違う血の味も楽しめるほどになってきた。

人と会うことだけが億劫なのだが、食事のためなら足も動く。
男なんて単純だ。
たとえ難しい相手だって、誘えばすぐについてくる。

「美夜、もう少し頻度を抑えなさい」

夜中帰ってくると、母に出迎えられて説教をくらった。

「まだ何事もないからいいけど、バレたら大変なことになるのよ。わかってる?」

「……うん」

厳しい口調に、私は身を縮める。

「それに、あんたにだって良くないわ。スパンが短くなればなるほど、どれだけ吸っても満足できなくなるんだから。甘いものと一緒よ。煙草と一緒」

母はテーブルで指をとんとんと鳴らして溜息をつく。

確かに、私も最近まずいと思っていた。
もう週に二、三回は誰かと会っている。

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