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「……好きよ」
私はゆっくり口を開く。
「もう会わないなんて無理。絶対いや。自分のことくらい自分で決める」
だから口を出すな、という意味を込めて旭を睨み返す。
僅かに旭の瞳が揺らいだ。
あの味を知って、後戻りなんてできるわけがない。
きちんと考えて決めたんだから、もう旭には頼らない。
私は吸血鬼として生きるのだ。
そう決めたのだ。
「……何かあったらどうするんだよ」
「大丈夫ですよ」
「危ない奴じゃねぇのか」
「心配いりません。そんなに過保護にならなくても平気です」
安心させるように微笑んでみせる。
旭の表情は険しいまま。
しばらく黙っていたが、そのまま立ち上がり、無言で部屋を出て行ってしまった。
「……ごめん、旭」
相手のいなくなった部屋に、ぽつりと落とす。
ごめん旭。
今までの生ぬるい関係を壊して、さっさと誰かと幸せになってほしい。
私の人としての理性が、あなたに向けられているうちに。
吸血鬼としての本能が、あなたを壊してしまう前に。
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