「……好きよ」

私はゆっくり口を開く。

「もう会わないなんて無理。絶対いや。自分のことくらい自分で決める」

だから口を出すな、という意味を込めて旭を睨み返す。
僅かに旭の瞳が揺らいだ。

あの味を知って、後戻りなんてできるわけがない。
きちんと考えて決めたんだから、もう旭には頼らない。
私は吸血鬼として生きるのだ。
そう決めたのだ。

「……何かあったらどうするんだよ」

「大丈夫ですよ」

「危ない奴じゃねぇのか」

「心配いりません。そんなに過保護にならなくても平気です」

安心させるように微笑んでみせる。
旭の表情は険しいまま。
しばらく黙っていたが、そのまま立ち上がり、無言で部屋を出て行ってしまった。

「……ごめん、旭」

相手のいなくなった部屋に、ぽつりと落とす。

ごめん旭。
今までの生ぬるい関係を壊して、さっさと誰かと幸せになってほしい。

私の人としての理性が、あなたに向けられているうちに。
吸血鬼としての本能が、あなたを壊してしまう前に。

|
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -