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「あれだけ会うなって言っただろうが!」
ばんっと旭が机を叩く。
「もう会っちゃったもん」
「会っちゃったもんじゃねぇよ!何考えてんだてめぇ、知らない男についてくなんて阿呆か!」
「別に、いい人ですよ」
「おまえに何がわかるんだよ?」
「わかりますよ。実際会ってるのは私だし、何もされてないもん」
むしろしているのは私。
彼らはみんないい人たちだ。
大人しくホテルについてきて、ホイホイ噛まれてくれるんだから。
「何もされてないうちはいいんだよ。何かあってからじゃ遅いだろ。彼氏とか馬鹿じゃねぇのか?」
「そういうふうに言わないでください」
「じゃあなんだ?おまえはその男のことが好きなのか?会ったばかりの知らない男のことが?」
旭がぎろりと私を睨む。
そんなに激怒するほどのことだろうか。
心配かけているのはわかっているが、私だっていつまでも子供じゃない。
もう旭に守られていなくても、ひとりで生きていける。
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