「はろー、潤ちゃん」

図書館に着くと、佐伯くんが玄関の前で待っていた。
私はぎょっとして、思わず後退る。

「覗きなんて趣味が悪いなぁ」

「いや、あれはちょっと、通りかかっただけで……」

「どうせなら出てきてくれたらよかったのに。そしたら、俺の好きな人ですよーって紹介できた」

佐伯くんは、そう言ってにやりと笑う。
私はぱっと頬を染め、ごまかすように目を逸らす。

この人、私の考えてること全部わかっててからかってるんじゃないの。

楽しそうに笑って、佐伯くんがベンチのほうへ歩いていく。
私は溜息をつき、仕方なく彼の後へ続く。
隣に座るのは憚られたので、ちょっと離れて腰を下ろした。

「今日、花音ちゃんと遊ぶって言ってなかったっけ?」

尋ねられ、私は頷く。

「でも、好人くんが迎えに来てたから帰しちゃった」

私の言葉に、佐伯くんが呆れた顔をこちらに向けた。

「馬鹿ですか、君。身を引いたあげく応援しちゃってるわけ」

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