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花音のまっすぐなところが大好きだった。
いつもうらやましくてたまらなかった。
好人くんも、そう。
花音がああいう人を好きになるのはよくわかる。
まっすぐで、揺るぎなくて、いつだって自信に溢れてる。
私もそんなふうにまっすぐでいたい。
二人を見て、強く思った。
大丈夫だ、私。
後悔なんかしてない。
ちゃんと前見て進める。
私はふっと息を吐いた。
それから、笑顔を作ってみせる。
「正直、花音のこと好きになりかけてたけどね」
そして、内緒話のように悪戯っぽく付け加えた。
花音が目を見開く。
私はにやりと口の端を上げる。
「好人くんとお幸せに」
一度瞬かせたその目から、また大粒の涙が零れた。
花音が顔を伏せたのを見て、私はきゅっと唇を噛む。
これでいい。
引き止める勇気も覚悟もなく、私の恋は彼女の涙とともに砕け散った。
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