「泣かないで」

カフェの中、隅の席だとはいえ泣いている子がいると目立つ。
私は苦笑して花音をなだめ、ティッシュを取って差し出す。

「別に悪気があったわけじゃないんだし、仕方ない」

「でも、私、潤ちゃんのこといっぱい振り回したもん」

「そうだね。振り回されたよ花音には」

素直に頷くと、さらに花音の目に涙が溢れる。
私は笑って手を伸ばし、くしゃりと花音の頭を撫でた。

初めて自分から触れたかも、と思う。
今更になって、少しどきりとする。

「でも、なんだかんだ楽しかったよ。花音に会えてよかったと思ってるし」

花音が真っ赤になった目を上げた。
私はほんの少し微笑む。

単純に楽しかったし、この経験は、いろんな意味で私を成長させてくれた。

花音に会えてよかった。

心の中で、もう一度呟く。

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