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「あの子が浅倉さんを好きだっていうのも、嘘じゃないよ」

珍しく、佐伯くんがフォローするように言う。
私は思わず苦笑する。

「どうしたの。佐伯くんが花音の味方をするなんて」

「君が酷い顔してるから」

そう溜息をついて、彼は足を止めて私の顔をじっと見た。

「そんな悲しそうな顔しないで」

呆れたように、困ったように言って、佐伯くんは私の頭に手を置く。
その温かさに、泣きそうになる。
表情が歪むのを抑えられず、私は顔を隠すように下を向いた。

「だから言ったでしょ、ぶっとばせって。なんなら俺が行ってきてやろうか」

「いりません」

「ああいうのは放っといたらつけあがるんだよ。全く、俺の潤ちゃんを泣かせるなんてね」

「泣いてません」

「そ?」

くくく、と可笑しそうに佐伯くんが笑う。
私も少しだけ笑ってみる。

本当に損な役回りだな、佐伯くん。
慰め役までさせるなんて、最低だ、私。

「……ありがとう」

ごめんなさいの代わりに、掠れた声で小さく呟く。
少しだけ目を上げる。
まるで保護者のように目を細め、佐伯くんは優しく私の頭を撫でてくれた。

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