7
騒がしい店内で、入り口のドアの開く音がする。
私は気にしていないふりをして、再びケーキに取り掛かる。
だけど、しばらくして聞き慣れた声がかけられた。
私にじゃない。
目の前の人物に。
「好人?」
その声のほうに、好人くんは黙って目を向ける。
私もつられて振り返る。
そこにいたのは、もちろん花音と佐伯くんだ。
花音は驚いた顔をしていて、佐伯くんはいつもと変わらない表情。
花音と目が合う。
一瞬、彼女の顔が歪められた。
「なんで一緒にいるの」
あからさまに花音の声のトーンが下がる。
「そっちこそなんで?」
答えたのは好人くんで、こっちもかなり不機嫌そうだ。
「たまたまそこで会っただけよ。傘持たないで歩いてたから、いれてあげただけ」
「いつからそんなに仲良くなったわけ」
「別に仲良くなってない!そっちこそいつから潤ちゃんと仲良くなったの!」
「こっちもたまたま会っただけだけど」
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