騒がしい店内で、入り口のドアの開く音がする。
私は気にしていないふりをして、再びケーキに取り掛かる。

だけど、しばらくして聞き慣れた声がかけられた。
私にじゃない。
目の前の人物に。

「好人?」

その声のほうに、好人くんは黙って目を向ける。
私もつられて振り返る。

そこにいたのは、もちろん花音と佐伯くんだ。
花音は驚いた顔をしていて、佐伯くんはいつもと変わらない表情。

花音と目が合う。
一瞬、彼女の顔が歪められた。

「なんで一緒にいるの」

あからさまに花音の声のトーンが下がる。

「そっちこそなんで?」

答えたのは好人くんで、こっちもかなり不機嫌そうだ。

「たまたまそこで会っただけよ。傘持たないで歩いてたから、いれてあげただけ」

「いつからそんなに仲良くなったわけ」

「別に仲良くなってない!そっちこそいつから潤ちゃんと仲良くなったの!」

「こっちもたまたま会っただけだけど」

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