「好人くんは」

何と言ったものか考えた後、私はゆっくり口を開く。

「花音のどこが好きなの?」

ちらりと目を上げると、好人くんは不意をつかれたような顔をする。
しかし、気分を害した様子はなく、食べる手を止めて考える素振りを見せた。

「……顔」

彼が短く発した言葉に、思わず変な顔をしてしまう。

「最初は顔。次に、明るいとこ。それから、わがままなところ」

端的に述べて、好人くんはこれでいいだろと私を見た。

「口にしたらこんなもんじゃね?でも、花音のことを言葉で言えばこうなるだろ」

挑戦的な視線を向けられて、ああ、と私は頷く。
つまり、全部好きなわけだ。

「そもそも、俺は頭で恋愛なんてしたくない。好きだから別れたくないし、他の奴に取られたくない。特にあんたみたいにふらふらしてる奴にはな」

さらに突き刺すような言葉を並べられて、私は苦い表情になる。

ああ、この人、花音より単純。
まっすぐで迷いがない。
だから苦手だ。

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