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「佐伯くん、もしかして女の子嫌い?」
様子を窺いながら尋ねると、佐伯くんはカレーを食べる手を止めて首を傾げた。
「嫌いだったら君のこと好きになってないよね」
さらりと反撃されて、私はうっと言葉を詰まらせる。
この人、いつもこう。
水を飲んで心を落ち着かせ、私はちらりと目を上げる。
「なんで私なんですか」
花音といい佐伯くんといい、どちらも予想できなかった二人だ。
軽く緊張しつつ返事を待つと、佐伯くんは少し考えるようにして口を開いた。
「浅倉さんは、人を見た目で判断しないでしょ」
思いも寄らない答えに、私はきょとんとする。
「俺のこともそうだけど、花音ちゃんのことも。同性だからって理由で、はねのけたりしないでしょ」
佐伯くんの目かこちらに向き、私はなんとも言えずに視線を落とす。
「あの子もそういうとこ好きになったんじゃないの」
さらに続けられた言葉に、私ははっとして顔を上げた。
そうだ、確かそう言っていた。
だけど、別にそんなの私だけじゃない。
誰だって、とは言えないかもしれないけど、大体の人はそうするはずなのに。
「嫌だなぁ、あの子のほうが先に気づいたんだね」
佐伯くんがそう言って、本気で嫌そうに目を細めるので、私は苦笑いを浮かべて食事に戻る。
なんで私なんか好きになっちゃったかな。
二人に申し訳なくなりながらも、その考えを振り払う。
せめて今は普通に楽しもう。
オムライスをかきこんで、私は笑顔を作って話を切り替えた。
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