本を借りて外に出ると、日が傾いていた。
黙って一緒に歩きながら、私は落ち着かずに話題を探す。

今まで何を話してたっけ?
……花音の話をしてたんだった。
それ以外は?
思い出せない。どうでもいいことばっかり話してた気がする。

私、どんな態度で接してたんだろう。
どんな顔して話してたんだろう。
今、一体何をどうすれば。

ちらりと様子を窺うように顔を上げると、ずっとこちらを見ていたらしい佐伯くんと目が合った。
彼は全部見透かしたようニヤニヤと笑っていて、私は我に返ってぱっと距離を取る。

「そっちが告白したほうみたいだね」

追い討ちをかけるようにずばっと言われて、私は一気に赤くなった。
何か言い返そうとしたが、言葉が出てこない。
佐伯くんはそんな私の様子を楽しそうに見て、わざとらしく続けた。

「完全に花音ちゃんのほういってると思ってたんだけどなー。まさかそんなふうに意識してくれるなんて思わなかったなー。そんな可愛らしい態度取られちゃうと、俺」

そう言って、覗き込むように顔を寄せてきた。

「期待しちゃうよ」

囁くような声に、私の頭はキャパオーバーでパンクした。
がん、と頭突きをくらわせて逃げ出し、謝罪の電話をかけたのはその夜のお話。

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