とんとん、と肩を叩かれて振り返ると、そこにいたのは佐伯くんだった。

「本借りにきたの?」

いつも通りの笑みを浮かべ、佐伯くんは尋ねてくる。
心臓が跳ねる。私は頷く。

「レポートの資料なんだけど。佐伯くんは?」

「俺はただ本読みに来ただけ」

佐伯くんはそう言って、手に持っていた本を持ち上げてみせた。
さらりとそんなことを言えるのが、また格好いい。
妙に恥ずかしくなって彼の顔から目を逸らし、私は手に持っていたメモに視線を落とした。

佐伯くんと会うのはあれ以来だ。
告白された日、以来。
メールはふつうにしていたけど、実際会うと気まずい。
と思ってるのは私だけか、佐伯くんはいつもの余裕な態度だ。

「何探してんの」

ふいに手元を覗き込まれて、びくっとして身を引く。

「あー……、これだな」

気にも留めずに彼は本棚に目を走らせ、さっさと目当ての本を探し出す。

背、高い。

重なるように伸ばされた手が、一番上の棚の本を掴む。
鼓動が速くなる。
私は魔法をかけられたように動けなくなった。

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