6
とんとん、と肩を叩かれて振り返ると、そこにいたのは佐伯くんだった。
「本借りにきたの?」
いつも通りの笑みを浮かべ、佐伯くんは尋ねてくる。
心臓が跳ねる。私は頷く。
「レポートの資料なんだけど。佐伯くんは?」
「俺はただ本読みに来ただけ」
佐伯くんはそう言って、手に持っていた本を持ち上げてみせた。
さらりとそんなことを言えるのが、また格好いい。
妙に恥ずかしくなって彼の顔から目を逸らし、私は手に持っていたメモに視線を落とした。
佐伯くんと会うのはあれ以来だ。
告白された日、以来。
メールはふつうにしていたけど、実際会うと気まずい。
と思ってるのは私だけか、佐伯くんはいつもの余裕な態度だ。
「何探してんの」
ふいに手元を覗き込まれて、びくっとして身を引く。
「あー……、これだな」
気にも留めずに彼は本棚に目を走らせ、さっさと目当ての本を探し出す。
背、高い。
重なるように伸ばされた手が、一番上の棚の本を掴む。
鼓動が速くなる。
私は魔法をかけられたように動けなくなった。
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