「ちょっと話がしたいんだけど」

一週間後の同じ授業で、やっと花音をつかまえた。
花音は戸惑った様子で私を見て、その瞳をうるうるさせる。
彼女の服をつかんだ私の手に視線を落とし、それからがばっと抱きついてきた。

「潤ちゃん!」

思いがけない反応に、私は思わず声を上げて後退する。
落ち込んでるかと思ったのに。
大学の近くのカフェに移動すると、花音は延々とあの日からこれまでの一週間について愚痴り始めた。

「もうやだ、あの男も好人も、勝手なことばっかり言って!」

ショートケーキを前にして、花音はぷんぷん怒っている。

「なんで花音の邪魔ばっかりするの?花音は潤ちゃんと一緒にいたいだけなのに!」

結局好人くんはこの一週間ずっと花音についていたらしいのに、この言われようだ。
あからさまで清々しい。
私は苦笑いを浮かべ、一口カフェオレを飲んで息を吐いた。

「私が、中途半端な態度取ってるのが悪いね」

その言葉に、花音の瞳が揺れる。
今まで明るくしゃべっていたのは、真面目な話をされるのが怖かったからなのだ、ということに気がつく。

「ちゃんと話しておきたいんだけど、いい?」

質問しながらも、断れないような口調で聞く。
花音は視線を落とし、迷ったような素振りを見せながらもこくりと頷いた。

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