「本気で言ってる」

何言ってるのははは、と笑い飛ばそうとした私の思考を呼んだように、佐伯くんが言う。

「浅倉さんが好き」

ふいに手が重ねられる。
熱い。
見つめてくる彼の瞳に、燃やされてしまいそう。

「付き合って」

真っ赤になって固まっている私に、佐伯くんはいつもより低い声で告げた。

付き合う?
私と佐伯くんが?
この王子様と私が?

「浅倉さん」

ぎゅっと手に力がこもって、私は目を上げる。
二人になると名前で呼んでくれなくなることが、ちょっとだけ寂しいと思う。

「俺と付き合ってよ」

どきん、と鼓動が跳ねる。
少し首を傾げ、切なさを含んだ声で言われて思わず頷きそうになってしまう。

佐伯くんのことは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
意地悪だけど、なんだかんだいつも話を聞いてくれるし、サバサバしてて付き合いやすい。

格好良いし、一緒にいて楽しいし、彼と付き合わない理由がどこにある?
付き合わない理由?
そんなもの。

瞬間、私の頭をよぎる、花音の泣きそうな顔。
私を好きだという、彼女の声。

自分がしようとしたことにはっとして、私はきゅっと唇を噛んだ。

ああ、あるじゃないか、ここに。

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