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とりあえず、佐伯くんに花音の話をしていたのがバレなくてよかった。
その前に、佐伯くんに話してしまったのは間違いだった。
家に帰った頃にはやたら疲れていて、どさりとベッドに倒れこんだ。
くっそー、それもこれも佐伯くんが余計なことをするからだ。
だんだん腹が立ってきて、私は鞄の中から携帯を取り出す。
アドレス帳から佐伯くんの名前を呼び出して、そのまま通話ボタンを押した。
「もしもし」
五回目のコール音の後、佐伯くんの声がする。
「あなた何してくれるんですか」
前置きもなく刺々しく言うと、くくく、と佐伯くんが笑った。
「怒ってた?花音ちゃん」
「怒ってましたよ非常に。どうしてくれるの」
「かーわいいね、あの子。思ってたよりわかりやすいんだけど」
「面白がらないでよ」
佐伯くんが楽しそうに言うので、私は思わず体を起こして眉を歪める。
楽しそうに笑いやがって。
こっちは講義の間、ずっと花音の愚痴に付き合わされてたっていうのに。
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